楽器も、道具も、覚え方は同じだと思っている。
頭でわかることと、体ができることの間には、大きな溝がある。コードの押さえ方を知識として知っていても、指は最初動かない。鉋のかけ方を言葉で説明されても、最初は削れない。毎日ように触れて、何度もやって、失敗して、ある日ふっとできるようになる。あの「ふっと」は、頭じゃなくて体に来る。
一度体に入ったものは、忘れない。何年も弾いていなかった曲も、指が勝手に思い出すことがある。体が覚えた道具の扱いは、考えなくても出てくる。むしろ考えると、できなくなったりする。
近道はない、というのがたぶん唯一のルールだ。動画を何百本見ても、自分の体は一ミリも変わらない。やるしかない。この、やるしかなさが、今の時代には不便に見えるのかもしれない。情報はいくらでも手に入るのに、体だけは時間をかけないと変わらない。
でも逆に言えば、時間をかけた分は、ちゃんと体に残る。それは誰にも取られない財産になる。楽器でも、道具でも。